ジュエリー歴史探偵33 甲府の「虫入りの水晶」

2020.05.13

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その最良たるは甲斐の国にあり

甲府の水晶の記事がまたまた掲載です。

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我国の水晶は甲斐と美濃に産す

水晶

我國(わがくに)に於(おけ)る水晶は甲斐及び美濃に産すとありて
其最良(そのさいりょう)なるは甲斐の國にあり 甲斐の國には御岳(みたけ)、岳守(たけもり)の
両山即ち其産地なれ共(とも)其精良(せいりょう)なるものは御岳山(みたけさん)のものなりと
なを尤(もっと)も岳守産のものにも良質なきにはあらざれど多くは珠に草虫(くさむし)
又は他の濁りを含みて概して御岳山のものの上位に置く事能(ことあた)はずとなり 
去る頃東京の玉匠(ぎょくしょう)水晶仕入の為甲府へ趣きしに水晶舗(すいしょうみせ)の
職人誤りて名壁(めいへき)を毀(こぼ)ちたりと嘆息(たんそく)すると聞き立ち寄りてみれば……
【1892年(明治◎) 6月11日 読売新聞】

草虫の入った岳守産の水晶

「日本で水晶は甲斐(山梨県)と美濃(岐阜県)で産出するが、最良は甲斐の国のものだ。
ここには御岳と岳守という鉱山があるが、より優れているのは御岳山のものだ。
岳守産にも良質のものがないことはないけれど、多くは玉に草虫が入っていたり、濁っていたりする。
先日、東京の加工屋さんが水晶を仕入れるために甲府に行っところ、
うっかり名壁(←原石のことか?)を壊したと水晶屋の職人がガッカリしていると聞いて立ち寄ってみると……」
といったところでしょうか。

記事中の岳守(たけもり)は「竹森鉱山」のことでしょう。
〝玉の中に草虫〟とはギョギョギョ!ですが、これは今でいう「草入り水晶」と思われます。
ほんとうに草が入っているわけではなくて、濃い緑色をした別の鉱物が
針のようにもわもわもわもっと入っているのが、草のように見えるというワケ。
次回に続きます!

#Enjoy Japanese Jewelry

(画像:草入り水晶)

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