ジュエリー歴史探偵24 オーストリア皇太子、水晶の玉欲しがる

2020.05.04

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甲府の水晶のニュース、またまた新聞に登場

甲府産水晶の玉は外国人の目にはよほど魅力的に映ったようです。
1寸は約3㎝、5寸5分以上とは直径18㎝ほどになりましょうか。

価格の最低を問わず是非譲り受けたし

連城(れんじょう)の玉を有するものあり

過日我邦(わがくに)へ渡来せられた墺國(おうこく)のハインリ親王は上野博物館を縦覧(じゅうらん)せられし
際御物(ぎょぶつ)五寸五分以上の水晶を見て殊(こと)の外(ほか)意に入り
若(も)し譲渡(ゆずりわた)しの出来る物ならば価格の最低を問わず是非譲受けたしと
掛官に問合わせられたる所是は御物にて売買品に非(あら)ずと懇(ねんごろ)に掛官より答えられしば
親王は益々渇望の念を増し其旨を横濱三十七番館の英商ウユルシ氏に語られし處(ところ)
ウユルシ氏は日本國内には尚(な)ほ他にも名玉(めいぎょく)あるべしとて人を四方に馳せ百方捜索せし處(ところ)
総州の豪家長谷川氏は六寸一分の透明なる明玉を珍蔵(ちんぞう)することを聞き……
【1889年(明治22) 読売新聞】

日本には他にも素晴らしい宝がある

「この間来日したオーストリアのハインリ王子は上野博物館(現在の東京国立博物館か国立科学博物館)を観覧した。
そこで17センチくらいの水晶を見てたいへん気に入り、いくらでも構わないから買いたいと係の者に言ったところ、
これは御物(皇室の所蔵品)であって売り物ではないのでと丁寧に断られた。
王子はますます欲しくなって横浜のイギリス商人ウユルシ氏に相談すると
日本には他にも素晴らしい玉があると言ってほうぼうを探し、千葉の資産家長谷川氏が18センチ以上もある透明な玉を持っていると聞き……」
といったところでしょうか。
ちなみに「連城の玉」とは中国の『史記』にある言葉で「無上の宝の玉」という意味だそうです。

この後、長谷川氏に10億円払うから売ってくれないかと頼んだが、うちは昔から大金持ちだからお金はいらない。
それより、こんな宝の玉を日本の皇族や華族から譲ってくれと言われるならいざ知らず、
外国人にはたとえ金をどれだけ積まれても譲らないと拒絶した、と続きます。
つづきは次回! この玉の正体が明かされます。

#Enjoy Japanese Jewelry
#STAY HOME


(画像:Mishima Pass in Kai Province (Koshu Mishimagoe), from the series “Thirty-six Views of Mount Fuji (Fugaku sanjurokkei)”

1830-33 葛飾北斎 シカゴ美術館所蔵)

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