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洋装化は男性がリード
装身具のお洒落にアグレッシブだったのは、明治の女性ばかりではありません。
明治の男性もそうとうアグレッシブ。洋装化は女性よりも男性のほうが早く進みました。
指輪を嵌めた紳士の記事をどうぞ。
其の指に嵌めた金の指輪を賜る
大金の指輪 埼玉縣下武州埼玉郡彦成村(さいたまけんかぶしゅうさいたまごおりひこなりむら)の椎名宇平次と云う男が 両國邊(りょうごくへん)の小間物店へダイヤモンド入にて五十圓以上の値格(ねうち)ある指輪を 僅か4圓八十銭にて売り渡せしは何か(中略)此指輪(このゆびわ)は近き頃まで一省(あるしょう)の長官たりし某公が 埼玉地方に遊猟(ゆうりょう)に赴き賜(たま)いしとき野となく山となく足に任せて駆け歩行かれし處(ところ)(中略) 誤ッて用水の中へ落賜いしを折ふし宇平次が其處(そこ)に通行したれば(中略)其用水に飛び入りて助け参らせいと 親切に御介抱さし上しかば某公には其厚意を嘉賞(かしょう)し取敢(とりあえ)ず其の指に嵌め賜いし金の指輪を賜われたれど 宇平次は左る高価の品とも思わず忝(かたじけ)なしとて受納(うけおさ)め置きしが~ 【1886年(明治19)4月14日 読売新聞】
お礼に嵌めていた金の指輪をあげるという斬新
埼玉県の椎名宇平次さんが両国の小間物店にダイヤモンド入りの50円(今の100万円余り)以上の価値がある指輪を
たった9万円くらいで売った。
なぜだと警察が宇平次を呼んで問いただしたところ(盗品を疑ったか)立派な理由があった。
この指輪はある官僚が埼玉に猟をしに来た時にため池に落っこち、通りがかった宇平次が飛び込んで助けて介抱した。
それに感謝した官僚が嵌めていた指輪をお礼にあげた。
宇平次は高価とも思わず貰ったが、入用だったので東京に出たついでにある小間物屋に持って行ったところ
4万8千円で買ってくれたので大喜びで帰った、というもの。
「えー!明治に指輪?」と思われる人も多いかもしれませんが、
指輪は明治のごくはじめの頃からすでに「当世一般の流行なり」という記録が残っているほど
明治のレディス&ジェントルマンの心を捉えたのでした。
文明開化、驀進してます。
#Enjoy Japanese Jewelry
#STAY HOME
(画像:「東京五大橋之一両国真景」林清親 画 明治9年刊行 国立国会図書館所蔵)